捺印と押印は、よく似ているけれども実は異なるものを指しています。
これらの違いについては、よく混乱が起こることがあります。
また、特定の状況下でシャチハタ式の印鑑が推奨されない理由についても疑問が持たれがちです。
そこで、これらの点について、より詳しく解説していきたいと思います。
◇文書における捺印と押印、そしてシャチハタの使いどころ
文書や契約書で印鑑を押す時に「捺印」と「押印」という用語を聞くことがあります。
これらは似ているようでいて、実は異なる行為を指します。
通常、署名した後には「捺印」を、名前を記入した後には「押印」をするのが一般的です。
捺印はよく法律の文脈で使われ、押印は日常的なシーンで用いられます。
シャチハタ式印鑑が公式な文書に推奨されない大きな理由は、その印影の一貫性が確保できないからです。
伝統的な印鑑では使用者の個性が印影に現れることがありますが、シャチハタのような大量生産された印鑑ではこれが難しいです。
また、ゴム製のため、押す力によって形が変わりやすく、同じ印影を何度も出すことが困難です。
そのため、公式文書には硬い材料で作られた伝統的な印鑑が好まれます。
しかし、日常的な使い方では、シャチハタも含めどんな印鑑も自由に使えます。
この点では、「シャチハタ」がある特定の商品名でありながら、広く一般的に使われるようになったことが興味深い事例です。
◇手書きの署名と捺印、電子署名と押印の適切な使い分け
手書きの署名と捺印、電子署名と押印は使う文脈に応じて適切に区別されますが、一般的にはどちらの方法も利用可能です。
手書きで自分の名前を記すことを「署名」と言い、通常これには「捺印」が伴います。
一方、名前を電子的に表示したりゴム印を使用する場合は「記名」とされ、「押印」が一般的に使われます。
「署名」は個人が直接筆を使って氏名を記入する行為であり、より個人的で正式な場面で使用されます。
それに対し、「記名」は名前を機械的に表示する方法を指し、ビジネス文書などでこの方法がよく採用されます。
「捺印」は手書きの署名に対して行われ、「押印」は機械的に作成された記名に対して用いられます。
具体的には、署名する際には自分の名前を直接書き、その上に印鑑を押す「署名捺印」が行われ、記名する際には文書に名前が既に記載されている場合、その確認として印鑑を押す「記名押印」がなされます。
法的な文脈においては、直筆の署名が持つ証拠力は非常に重要とされています。
そのため、法的な文書や重要な契約書では、署名と捺印の組み合わせが最も信頼性が高いとされています。
この証拠力は、「署名捺印」、「署名単独」、「記名押印」、「記名単独」の順に高いとされています。
◇まとめ
シャチハタ式スタンプの使用が適切かどうかは、場合によって異なりますが、多くの状況では伝統的な印鑑と朱肉の使用が求められています。
ただし、近年は速乾性インクの使用が増加しており、許容される範囲については一概には言えない状態です。
シャチハタ式の特徴としては、インクが紙に染み込む方式を採用しているため、朱肉を使用する印鑑と比べると、時間が経過するとインクが薄れる可能性があり、これが文書の長期保存に際して印影の判読性を損なうリスクをもたらします。
また、紙質によってはインクが滲むことがあり、読み取りが難しくなることも考えられます。
伝統的な朱肉を使用する印鑑では、このような問題は比較的少ないです。
公的文書においては、シャチハタが大量生産されたゴム印であることや、捺印時の力の加減やインクの状態によって印影が容易に変化するため、偽造防止や印影の照合に問題があるとして、その使用が避けられがちです。
偽造についても、標準的な印鑑でさえ製造時に完全に同一の印影を再現するのが難しいため、公的な文書でのシャチハタ使用は難しい側面があります。
認印としては問題ないものの、時間の経過と共に印影が変化する恐れがある文書には不向きとされています。
文書の種類や要求によってシャチハタの使用が適切かどうかは変わるため、具体的な状況での検討が推奨されます。
しかし、一般的には公的文書への使用は避けるべきであるとされています。
