春と秋、年に二度訪れるお彼岸では、多くの人が故郷へ帰り、お墓参りをします。
この時期に何を供えたら良いか、またその費用の相場や、もし用意できなかった場合に現金を供えてもいいのか等、疑問を抱える方も多いですよね。
この記事では、お彼岸における供え物の一般的なマナーや推奨されるものについてご紹介します。
◇春と秋のお彼岸、どんな供え物が適切?【春彼岸・秋彼岸】
春のお彼岸には「ぼたもち」、秋には「おはぎ」を供えるのが通例です。
どちらももち米で作られた餡包みの和菓子で、実は同じものなんです。
しかし、季節によって名前が変わるのは一体なぜでしょう?
◯春彼岸における供え物
春彼岸には、牡丹が咲くこの時期にちなんで「ぼたもち」を供える風習があります。
これは「ぼたもち」の名が牡丹から来ているためです。
また、この時期にぼたもちやおはぎを食べる理由には、使用される小豆に邪気を払う力があるとされる伝統や、昔砂糖が珍重されていたため、それをたっぷり使ったぼたもちやおはぎを供えることで、先祖への敬意を示すという思いがあります。
◯秋彼岸における供え物
秋彼岸には、一般に「おはぎ」が供えられます。
その名前は、秋に美しく咲く萩の花に由来しています。
ぼたもちとおはぎの大きな違いは、使われる小豆の収穫時期にあり、秋には新鮮な小豆で作った皮つきの粒あん、春には時間が経って硬くなった皮を剥いたこし餡を使うのが一般的です。
◇お彼岸の供え物の相場
お彼岸に供える品の適切な価格は、だいたい3,000円から5,000円が目安です。
お寺での法事などに参加する際は、供え物のほかにお布施を用意することもあります。
その場合、供え物には1,000円から2,000円程度を目安にし、お布施には約3,000円を見込むと良いでしょう。
供え物は高ければ高いほど良いというわけではなく、逆に高価すぎると相手を困らせることもあるため、3,000円から5,000円の範囲で考えるのが適切とされています。
◇お彼岸に供えるもののマナー
お彼岸に供える具体的な品物に厳しいルールは設けられていませんが、「五供」に代表される基礎的な要素に沿って、お墓や仏壇に供えるものを選ぶことが一般に勧められています。
五供は次の通りです。
主に線香を使い、その香りが仏様に届くとされています。その香りが亡き人へも届けられると考えられています。近年では、コーヒーや緑茶など特別な香りの線香もあり、故人が生前好きだった香りであれば、特に喜ばれる可能性があります。
線香と同じく、花からの香りも仏様へと届くといわれています。故人が好んでいた花を供えることが推奨されます。
ろうそくは使用することで消費されるため、供えられると好まれます。
故人が生前に好んでいた食べ物や飲み物を供えると良いでしょう。また、季節の果物や、ゼリーや羊羹といったお菓子、乾物なども適しています。
お水やお茶を仏壇やお墓に供えます。この水は「浄水」として知られていますが、宗派によっては水を供えない習慣もあります。
供え物を選ぶ際は、これらの基本的な要素から選べば、大抵の場合問題はありません。
ただし、仏教では生き物を殺すことを避けるべきとされているため、生の魚や肉は避けるべきです。
また、消費期限が短い食品は、供えた後の処理を難しくさせることがあるため、これらも避けた方が賢明です。
◇お彼岸に現金を供えることについて
お彼岸の準備で時間が足りなくなった時、現金を供えることが適切かどうか悩む方も少なくありません。
この慣習は地域や家庭ごとの伝統により異なり、一概には言えない部分があります。
お彼岸には多くの親戚や友人が集まり、お墓参りや法要が行われるため、供え物がかぶりがちになり、特に食品の保存や消費で困ることもあるでしょう。
このような理由から、供え物の重複を避けるために現金を選ぶ家庭や地域もあります。
ただし、現金を供えることが広く受け入れられているわけではなく、場合によっては具体的な物品が望まれることもあります。
そのため、実家や地域の慣習に従った選択をすることが大切です。
◇お彼岸の供養品に熨斗紙は必要か?
結婚祝いや出産祝い、季節の挨拶品などでは熨斗や熨斗紙を見ることが多いです。
熨斗は伝統的に干しアワビを象徴し、「幸せが長続きするように」という願いや、不老長寿の象徴とされています。
しかし、お彼岸の供養品には熨斗紙を使わず、祝事ではないため熨斗を省き、水引のみが印刷された「掛け紙」を用いることが一般的です。
水引の色は祝事では赤と白が使われますが、お彼岸では黒と白、双銀、または黄と白が用いられることが多く、これは地域によって異なります。
◇お彼岸におすすめの供花とその選び方
お墓参りや仏壇への供養で菊を選ぶ人が多いですが、必ずしも菊でなくても大丈夫です。
亡くなった方が好きだった花や、その季節に合った花を選ぶのが一般的です。
供花の色に関しては、特に決まりはありませんが、白や淡い黄色、紫などの優しい色が好まれがちです。
特に母の日に関連づけられるカーネーションは、1907年にアメリカで始まった、故人への敬意を表すための白いカーネーションの伝統から、お彼岸でもよく選ばれる花です。
お彼岸での供花としては、白や黄色のカーネーションが特に人気です。
春にはアイリスやマーガレット、トルコキキョウが、秋にはリンドウやケイトウが適しています。
ただし、強い香りがある花、毒性がある花、棘がある花は避けた方が良いでしょう。
◇まとめ
お彼岸の供養品にかけるべき金額の平均は3,000円から5,000円です。
お布施を追加で用意する場合も、合計でこの範囲内に収めることが推奨されます。
供養品に関して厳しいルールはありませんが、仏教の教えに沿って、生きた動物から取った肉や魚は避けるべきです。
また、消費期限が短いものは供えることで受け取る側を困らせる可能性があるため、長持ちするお菓子や乾物などが好まれます。
時間に余裕がない場合は、現金を供養品として用いることも一つの選択肢ですが、これは地域や家庭によって受け入れられ方が異なるため、事前に確認することが重要です。