ふっくらとした頬、細めの目、そして小さな口を持つ「おかめ」と「おたふく」について、今回は詳しくご紹介します。
これらのお面がどのように異なり、なぜ縁起物とされるのか、どちらがより多くのご利益をもたらすのかを探ります。
◇「おかめ」と「おたふく」の違いとは
「おかめ」と「おたふく」は見た目が似ており、どちらも日本の伝統的なお面です。
特徴は以下の通りです。
・細い目
・低く小さな鼻
・小さな頭から垂れる髪
それぞれの由来や背景には様々な物語があり、複数の説が存在するため、どの説が最も正確かは明らかではありません。
以下で、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説しますので、ご覧ください。
◯「おかめ」の由来と特徴
・鎌倉時代、夫を助けた後に自ら命を絶った女性がモデルとされています。
・室町時代には、特定の巫女の名が由来とされる場合もあります。
・頬が突出しているため、「瓶(かめ)」に例えられ、「おかめ」と呼ばれるようになりました。
・江戸時代には、里神楽で頻繁にこのお面が使用されました。
・通常、「ひょっとこ」と一緒に表されることが多いです。
・「阿亀」や「お亀」とも表記されることがあります。
◯「おたふく」の由来と特徴
・江戸時代、京都で裕福な男性に見初められて玉の輿に乗った女性がモデルです。
・狂言のお面「乙御前(おとごぜ)」が起源で、「乙」が変化して「おたふく」と呼ばれるようになりました。
・頬がふっくらしていることが、魚の「河豚(ふぐ)」を連想させるため、「おたふく」と名付けられました。
・「叶福助(かのうふくすけ)」という伴侶がおり、しばしばペアで表されます。
・「阿多福」や「お多福」とも記されることがあります。
これらのお面は外見は似ていても、それぞれ異なる時代や背景の物語を持ち、特有の魅力があります。
◇どちらの縁起がより良いとされているのか?
「おかめ」と「おたふく」は、どちらも幸運を招くとされる縁起物として扱われています。それぞれには、特別な物語が背景にあります。
この二人のモデルとなった女性は、ふっくらとした頬、小さく丸い鼻、細い目を持ち、外見がしばしば混同されることがあります。
◯おかめの由来とその効果
京都で有名な大工の長井飛騨守高次の妻、阿亀がモデルです。
高次が大報恩寺の千本釈迦堂の主任工事を任された際、柱を誤って短く切ってしまいました。
阿亀は、他の柱も短く切って調整することを提案し、これが釈迦堂を完成させるための解決策となりました。
しかし、鎌倉時代の厳しい社会規範の中で、女性が男性に意見することは許されなかったため、阿亀は夫の名誉を守るため自ら命を絶ちました。この行動が後世に語り継がれ、おかめは夫婦円満の象徴とされるようになりました。
実際に千本釈迦堂には、阿亀を祀る「おかめ塚」が建てられ、今も残っています。
関西地方では、建築工事の際におかめの面を模した「扇御幣」を飾る伝統があります。これは工事の安全、家族の安全、そして繁栄を祈る縁起物です。
このように、「おかめ」は夫婦の和合、家庭の安全、そして建築の成功を祈る象徴として大切にされています。
◯「おたふく」の起源と幸運
江戸時代、京都に貧しい家庭に生まれた女性「お福」がいます。
彼女はある日、裕福な呉服商「叶福助」と偶然出会い、一目で彼に惚れられました。二人は結婚し、幸せな生活を送りました。この物語はシンデレラのような話として親しまれ、時代を超えて人々に愛されています。
お福が受けた幸福が多かったことから、「お多福(おたふく)」という名前がつけられました。
現在も京都を中心に、「お多福」と「福助」のペアの人形や置物が飾られ、商売繁盛、夫婦円満、招福万来の縁起物とされています。
◇概要
「おかめ」と「おたふく」は、どちらも古くから日本に存在するお面で、外見は似ていますが、それぞれの起源や背景にある物語は異なります。
モデルとなった女性やその時代も異なっています。
現在ではこれらが一部で同一視されることもあり、どちらも家庭の円満や福を招く象徴として広く受け入れられています。
これらのキャラクターは、その愛らしさとユーモラスな表情で、日本の文化において肯定的な役割を果たしています。